勃起障害(ED)とは性交時に十分なだけの勃起が得られないため、あるいは十分な勃起が維持できないため、満足な性交が行えない状態をいいます。1998年の調査では40〜45歳で16%、46〜50歳で20%、51〜55歳で36%、56〜60歳で47%ですから二人に一人はEDという状態です。もとより生死に関わる疾患ではありませんが、男性にとってはこれからの人生の何事においても自信を消失させる大きな悩みです。
今までこうした悩みは誰にも相談できず、またまじめに応じてくれるところもありませんでした。せいぜい男性誌の広告や友人の体験に頼るくらいでした。バイアグラは局部の血流を増加させ勃起はさせてくれますが、漲る活力、パワーといったものは全身からくるものでただ勃起しているからいいというわけではありません。
中国医学でも男性の悩みについての治療はタブー視されていましたが最近になりオリンピックを前に生活水準の上がった現代中国では「中医男科」という診療科が全国各地の病院、専門医院ができ始めました。「泌尿器」でも「精神科」でも「不妊クリニック」でもない、男性の悩みをまるごと治療する科です。もともと人間の生命力をアップさせることが得意な医学、中国医学がまじめに男性のことを考え始めたのです。
おなじEDでもみんな同じようにバイアグラやマムシやスッポン、オットセイのペニスを飲めばよいとは中国医学は考えません。それぞれの身体のウィークポイントがありそれがたまたまEDという同じ症状になったのに過ぎません。
ここではEDになりやすい身体のウィークポイントを個々に解説していきます。
天津曹開纈医男科医院の曹開(ソウカイヨウ)教授と松江
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おなじみのバイアグラ(クエン酸シルディナフィル)は陰茎海綿体充血不良によるEDには効果がありますが、心臓疾患や糖尿病などに起因するEDには効果が薄く、副作用も心配されます。
前回お話しましたが、中国医学では身体のウィークポイントが男性自身にまで悪影響を及ぼし勃起障害を起こしていると考えます。身体のウィークポイントは人により様々です。EDの他に身体が冷える人、逆に火照る人、イライラする、不安になる、尿がなかなか出きらない、すぐにトイレに行きたくなる・・・。ED以外の症状は人により違うのです。中国医学ではそれらの身体の状態をも考慮しウィークポイントの原因を探り、治療に使う漢方薬や養生法を提案していきます。ただ局部が勃起しても身体がヨレヨレでは質のよいSEXはできません。中国医学では身体をまるごとオーバーホールしていくのです。
中国医学では生殖能力を「腎」の働きとして考えています。これは女性でも男性でも同じです。生まれつき「腎」の能力が強ければ若々しく魅力的です。俳優の松平健さんは51歳で14歳年下の女性と結婚し子供を儲けました。マツケンサンバでも舞台で激しい踊りを見せてくれましたね。かなり腎のパワーが強いのでしょう。同じ50代でも疲れきってこんな元気もない見るからにヨレヨレの男性もいます。これは腎パワーの違いです。
腎のパワーを知るひとつの指標に「男性ホルモン」があります。男性ホルモンであるテストステロンは睾丸から分泌されますが分泌量は年齢とともに減少していきます。この減少はストレスにより加速されます。昨年、50代より40代のほうが男性ホルモンが少ないという報告がありましたが、これは職場で40代男性が今までにないストレスにさらされていることが原因でしょう。
同じ年代でも腎のパワーが人により異なり男性ホルモン量も異なりますが、 これは養生法を上手く利用することで促進することができます。
@ウォーキングや筋トレを行なう:筋肉運動はホルモンの分泌を促します
Aいろいろな食材を積極的にとる:山芋、ザクロ・・・
B夜更かしを避け早寝早起きを:よい睡眠はホルモンの分泌を安定させます。
腎パワー、男性ホルモンに該当するものを中医学では「腎精」と呼びます。EDの原因はさまざまですが共通しているのは腎パワー、男性ホルモンの減少、すなわち「腎精」が不足しているということです。 中医学ではEDの漢方としてまず「腎精」を増やすことを基本に考えていきます。
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男性はあまり認めたがりませんが、結構「冷え性」の方がいらっしゃいます。 中医学では身体を温めてくれる臓器として「腎」を考えていますが、「腎」は ちょうど腰のところに位置し「生殖」と「泌尿」を管理している臓器でもあるのです。 「腎」の温める能力の低下はそのまま「生殖」「泌尿」にも影響を与えます。
【主な症状】
足腰に力がはいらない、頻尿(透明な尿がたくさんでる)、勃起してもあま り固くならない、精液が薄い、量が少ない、倦怠感、寒がり・・・
【主な原因】
高齢者、中年の早老早衰、生まれつき身体が弱い
【中医学的説明&対策】
腎精のほかに腎の身体を温める能力の低下。腎の温める能力を強 める。
【主な生薬】
鹿茸:鹿の角は3日で1cmとすぐ成長します。そのパワーから鹿の精力の強さ を中国人は感じたのでしょう。硬くなる前の柔らかい角を使います。 海馬:タツノオトシゴの内臓を取って乾燥したものです。
ゴウカイ:20cm以上のオオヤモリの内臓を取って乾燥したものです。ゴウが雄でカイが 雌といわれ一対になったものを使います。 海狗腎・鹿鞭・広狗鞭:それぞれオットセイ・鹿・イヌのペニスと睾丸です。中医学には
同じ臓器が同じ臓器を助けるという発想があります。
☆注意 )以上のものはよく巷の強壮薬の中にはいっていますが、腎を中心に温める力が強いので、 熱がりの人には適当ではありません。ペニスの元気のないのには様々な原因があります。 原因をハッキリさせてから漢方薬を選びましょう。
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「腎」には身体を温める働きの他に、あまり温まりすぎて身体がオーバーヒート(火照り)しないようにする冷却水的な働きもあります。温める働きを「陽」、冷却水的な働きを「陰」と言います。
【主な症状】
身体の火照り、のぼせ、足腰に力がはいらない、足の踵の痛みがあります。ED関連の症状としては、性的に興奮しやすい(性欲の仮亢進)、勃起しても固くならない、早漏、精液があまり出ない、などがあります。
【主な原因】
陰が不足するのは夜更かし、オーバーワーク、セックスや自慰のやりすぎで冷却水が不足するのが原因と考えられています。
【中医学的説明&対策】
陰を補い身体の余熱を鎮めてあげるようにしなければなりませんが、前述の身体を温めてしまう強壮薬を飲んでしまい悪化させてしまっているケースが多いです。
【主な生薬】
地黄・山薬・クコシ、西洋参など身体の熱を冷ます生薬を中心に身体を整えていきます。
中医男科の世界的権威、曹開ヨウ教授から春節のお祝いカードが松江に届きました!
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EDは単に身体が衰えたためにおこるとは限りません。精神的な調和、気や血液の流れなども密接に関係しており、単純に精力剤やドリンク剤を飲んでも効かない場合も多くあります。
【主な症状】
勃起しても固くならない。少しの情緒の変動でも勃起に影響する。睾丸、ペニス疼痛。射精痛・下腹部の痛み。
【主な原因】
パートナーとの感情の不一致、緊張、心配、仕事のストレスなどで、気や血の流れが停滞すると性機能は弱まります。またコックリングなどの器具で陰茎海綿体の充血を持続させている人もいますが、これもやがては血の停滞を起こします。この血の停滞を中医学では「オ血(オケツ)」と呼びます。
【中医学的説明&対策】
精神的にリラックスすることにより体内の気や血はスムーズに流れ始めます。活血薬に分類される漢方薬を中心に使います。
【主な生薬】
香附子、丹参、紅花、センキュウ、etc..
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EDというとお年寄りとか身体が弱い人の病気のように思われがちですがそうとも限りません。中医学では同じ症状でも【虚=不足】と【実=亢進】に分けて原因を探っていきます。今回説明するのは【実=亢進】からEDになる場合です。
【主な症状】
勃起不全、精液が漏れやすい、白濁、陰部がかゆくて湿っぽい、尿が黄色く濁る、身体が重だるい、イライラする、舌は赤く黄色いベドッとした苔がある。
【主な原因】
お酒、脂っこい食事、甘いものの取りすぎ、セックスの過剰が原因で身体の中に湿熱というベタベタしたものが溜まると中医学では考えています。この湿熱が陰茎に注入されるとペニスの気の流れが阻害され勃起しなくなります。
【中医学的説明&対策】
食事の内容に注意。あまり味の濃い物は控えます。湿熱を取り去る漢方を中心に服用します。このタイプも強壮薬はお勧めできません。
【主な生薬】
竜胆草、黄柏、知母など。
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肉体的だけでなく精神的な原因でEDになる場合も多くみられます。セックスがうまくいかなかったことがショックで以後勃起不能になることもありますが、他にも過去の恐怖体験が原因になる場合もあります。
【主な症状】
驚き、恐れによって突然勃起不能になる。動悸、不眠、息切れ、抑鬱。
【主な原因】
性格的に臆病で、驚きやすい。
【中医学的説明&対策】
中国医学では「驚き」や「恐怖」は腎にダメージを与えると考えれれています。幼いときの恐怖体験が腎虚の原因になることがあります。精神のバランスを保つようにすることが大切です。
【主な生薬】
桂枝、芍薬、竜骨、牡蠣、人参、五味子など。
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精神疲労にるEDもあります。Fは心理的なショックが原因ですがGは考えすぎ、頭脳労働によるものです。
【主な症状】
神経の使いすぎにより勃起不全、勃起しても固くならない、食欲低下。動悸。不眠。不安
感、焦り。
【主な原因】
精神活動は気血の供給が必要ですが、神経の使いすぎは気血を消耗してしまいペニスまで充分な血液が行き渡りません。
【中医学的説明&対策】
気血の不足はさらに精神状態を不安定にしてしまい勃起不全を誘発させます。睡眠時間を
十分にとりリラックスした時間を作る養生も大切です。中医学では血気の増える処方を使
います。
【主な生薬】
人参、オウギ、竜眼肉、遠志、酸棗仁など。
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