妊娠を希望する男女が2年以上性生活を行っても妊娠しない状態を《日本産科婦人科学会》では「不妊症」と呼んでいます。
これは80%〜90%のカップルが1年以内に妊娠するデータに基づいたものです。
女性は35歳を過ぎると卵子の質が低下し受精しにくくなり、とくに原因のない不妊症の患者さんが病院で治療を受けた場合妊娠率は
35歳未満では75%なのに対し35歳以上になると50%に低下します。
中国の古い医学書《素問》によると女性の身体は7の倍数で変化していくそうです。7×2=14歳で初潮、
7×3=21歳で女性としての成熟期に、7×4=28歳をピークに7×5=35歳から少しずつ老化が始まります。
7×6=42歳で老化は加速し、7×7=49歳で閉経を迎えます。
これは上記の病院での不妊治療の年齢による成功率と一致していますね。
漢方(中医学)では「誕生」「成長」「生殖」「老化」を「腎」の力の状態で考えていきます。 同じ40歳でも若く見える人、老けて見える人がいますがこれはその人が生まれつき持っている「腎」力の差なのですね。 女性は35歳を過ぎると卵子の質が低下し受精しにくくなるそうですがこれも「腎」力が加齢とともに衰えてきたからなのです。 ですから、中医学で妊娠しやすい身体を作るにはまず「腎」を強化し、「生殖」力をつけることから始めていきます。 最近ではさらに細かく女性の身体の周期「生理期」、「卵胞期」、「排卵期」、「黄体期」 によって漢方薬を使い分ける「中医・周期療法」が効果を上げています。
また、慶応義塾大学の調査によると不妊夫婦の48%が男性因子にあることがわかっています。 男性の精子が減少傾向にあるという報告もあり今後ますます男性不妊が増える可能性があります。 女性の不妊検査は種類が多く時間もかかりますが、男性は精子だけ 。 最初から夫婦そろって検査を受けられるとよいですね。 以下は正常な精液(上)と精子の障害(下)の表です。 精子の障害の中で、染色体異常や造精機能障害による無精子症と 診断された場合はかなり難しいのですが、それ以外の場合は生活スタイルの見直し と同時にやはり「腎」力を強化する漢方薬で精子の数や運動率を改善することができます。 一ヶ月:体質に応じて3万円位から。 男性は一ヶ月:1万円が目安です。
精子の色 | 乳白色で不透明 |
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精液量 | 2ml以上 |
精子数 | 1ml中6000万〜一億個 |
運動率 | 射精1時間以内で50%が全進運動 |
精子正常形態率 | 30%が正常な形態 |
精子生存率 | 75%以上 |
無精子症 | 精子の色が透明、精液量が0ml、精子がいない |
精液減少症 | 精液の量が2ml未満 |
乏精子症 | 1ml中に精子が2000万個以下 |
精子無力症 | 運動率が50%未満 |
奇形精子症 | 正常形態の精子が30%未満 |
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不妊症の方の基礎体温表を見てみると「低温期が長い」場合がよくあります。女性の周期は28日。前半の14日が卵胞期(36.2,3℃)後半の14日が黄体期(36.7、8℃)が理想です。 しかし生理がなかなか来ない女性は前半の低温期が長いようです。
陰陽学説で言えば体温の低い卵胞期は「陰」、体温の高い黄体期は「陽」です。卵胞期は卵胞や内膜の増殖 、排卵に向かいオリモノが出るようにする期間ですが、卵、内膜、オリモノも陰に属するものです。この陰 の時期が充実していなければ卵胞も育たず不妊の原因になるのです。
この期間が長いということは陰が十分にないということですが、陰陽学説のなかに「陰陽依存」という考え があります。これは陰だけでは、また逆に陽だけでは存在できないという考え方です。
卵胞期は陰の期間ですが、ただ陰を補う薬を使用するのではなく陽を補う薬を少量加えたほうが陰は大きく 育ち始めます。これを陽中求陰と言います。お汁粉を作るとき塩を少々いれるのと似ていますね。
陽を補う生薬に鹿の幼角、鹿茸(ロクジョウ)がありますが、鹿茸は生殖能力をアップさせる作用があるので 30歳を過ぎた女性にはお勧めです。
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